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先天性橈尺骨癒合症

肘より上(上腕部)にある骨はひとつで上腕骨といいます.それに対して肘より下(前腕部)にはふたつの骨があります.母指側の骨が橈骨,小指側の骨が尺骨です.橈骨は主に手関節を,尺骨は主に肘関節を担っていますが,尺骨の回りを橈骨が回旋することで,手のひらを上向けたり下向けたりする働きもあります.この運動を前腕の回外・回内運動といいます.字を書くときは手のひらが下を向いた状態で手を使用し,顔を洗うときは手のひらが上を向いた状態で水をすくう,というように手のひらを上向けたり下向けたりすることは日常生活で必要な動作です.

 

先天性橈尺骨癒合症は橈骨と尺骨がくっついていて,この回外・回内運動ができないという生まれつきの病気です.癒合している状態によって手のひらが上を向いたままの場合と下を向いたままの場合とその中間くらいで固定されている場合とがあります.

 

極端に手のひらが下を向いた状態,すなわち強い回内位で固定されていると不便が大きいのですが,中間位から軽度回外位で固定されているとあまり不便がありません.肩をまわすことで代償できるからです.あまり困っていない場合には,生まれたときからの病気ですが,少し大きくなってから気づかれることもあります.

 

お示しした写真では手のひらを上に向けようとしているのに,左手は上に向かないことを示しています.レントゲンは向かって右が正常の前腕,向かって左が癒合症の前腕ですが,レントゲンでは正常でもふたつの骨が重なって写ることが多いので,わかりにくいかもしれません.また,完全には癒合せずに癒合しかかっている状態で回内・回外ができるが動かせる範囲が少ないだけという軽症例もありますし,レントゲンは専門家でないと解釈が難しいです.癒合は通常は肘に近い方に生じます.その部分で橈骨の先端が前方または後方にずれていることがあり,橈骨頭脱臼を伴う先天性橈尺骨癒合症と呼ばれます.この時には肘がしっかり伸びきらない場合もありますが,これも軽度であまり困ることはありません.

 

手術治療は回内・回外運動ができるようにする関節授動術と,手の向きをあまり不便のない向きに変える矯正骨切り術に分かれます.当然,動くようになった方がいいのですが,授動術は技術的に難しく結果がよくない場合もあるので,安全確実な矯正骨切り術が行われることもしばしばです.私も癒合の状態に応じて使い分けています.

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