合指症
合指症は生まれつき指どうしがくっついた状態をさします.典型的な合指症は,指がお母さんの胎内で形成されてゆく過程で何らかの問題が生じたために,本来分かれるべき指が分かれそこなった時にみられます.特殊な合指症には,一旦作られた指が再度くっついた合指(先天性絞扼輪症候群など)や,指自体の形成不全を伴う合指(短合指症など)もあります.また,合指が他の疾患に合併する場合(橈側列形成不全,中央列形成不全,裂手など)もあります.
ここでは典型的な合指症について説明します.それ以外の合指症については各項目をご参照下さい(先天性絞扼輪症候群,短合指症,橈側列形成不全,中央列形成不全,裂手など,一部の記事は未完成です).典型的な合指症とは,指がくっついている以外はほとんど問題がないように見える,切り離せばそれですむように見える合指症です.組写真で上2列がこれに相当します.このタイプの合指症には大きく分けて二つの型があります.外観からはどちらの型かわからないことがあるのでレントゲン写真を載せておきます.ひとつはお見せしているレントゲン写真左図のように指が皮膚だけでつながっていて皮膚の中では指骨が独立している皮膚性合指です.もう一つの型は右図のような骨性合指です.骨性合指では骨どうしが癒合しているのでふたつの指を別々に動かすことができませんし,関節の動きそのものが悪い場合もあります.適切な治療を行えば,皮膚性合指ではほぼ変形を生じることなく治りますが,骨性合指においては治療後も多少の変形が残存することがあります.
では適切な治療とはどのようなものでしょうか.治療の基本的な目的は指の分離です.しかしながら単純にハサミやメスでまっすぐ切っただけでは,合指の再発や指の変形を必ず生じます.それを予防するためにはジグザグの切開を用いる必要があるということがわかっています.さらに指間を分けた後に生じた皮膚欠損部に植皮をする必要があります.これらの操作の中で血管や神経や腱などを適切に処理する必要があります.これらに加えて骨性合指では癒合した骨をノミなどで分ける必要がありますし,その際に関節の靭帯再建などを行うこともあります.このようにいろいろな操作を術中に行うため,手術は経験を積んだ医師の手で行われる必要があります.
一般的な合指症は手術を急いではなりません.小さすぎる指に対しての手術は思い通りに行かない可能性があります.手術は皮膚性合指の場合6か月から1歳をめやすに行います.骨性合指では合指になっていることが成長に障害を与える危険性があり,皮膚性合指より若干早めに手術をすることが多いです.お子さまの手がどのタイプの合指症であるのかの判断は,多くの場合は外観でできますので写真を送っていただければある程度アドバイスできると思います.(お問い合わせフォームをご利用下さい)
骨性合指には指が本3本以上癒合している場合や,そもそも指の数が多い場合,少ない場合など複雑なものもあります.左上の写真で下2列がこれに相当します.その治療については個々のケースでかなり異なりますので,一度直接診せて頂いた方がいいでしょう.