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裂手・裂足

裂手は手掌が裂けたようになった手です.外観から受ける印象が強いので,初めて見ると驚きが大きい先天異常です.典型例では中指とその基部にある骨(中手骨と言います)が欠損し,指が欠損した部位が深いV字状の陥凹になっています.重症になるにつれて示指や環指も欠損して指の数が減りますが,中指だけが欠損していることが多いです.裂足では複数の趾が欠損していることが多いです.発生頻度は10000人あたり0.14人と言われています.家族に同様の病気があることが比較的多く,その場合は常染色体優性遺伝を示します.裂手に裂足を伴う裂手裂足症候群は第7染色体上のSHFD1遺伝子の異常であることが明らかにされていますが,SHFD1に異常を認めない裂手も多数あります.両側発症が半数を占め,女性よりも男性にやや多いです.また同様の異常が手と足の両方に見られることも多いです.

 

昔,有効な手術がなかった時代に治療せずに放置された裂手の大部分で機能障害が驚くほどありませんでした.そのため今日でも治療は整容の改善を重要視して行いますが,もちろん機能を損ねないようにしなければなりません.残念ながら指の数を増やして5本にすることはできませんので,治療はイメージとしては中指がない手を小指がない手に変える手術となり,1歳前後に行います.手術をすれば手の外観の改善だけでなく,正常なパターンでの把持動作・つまみ動作を獲得することができます.裂手のままだと物を親指で持とうとせずに裂手部分で持ちます.そのように手の使い方がおかしいと常に人の目を引いてしまいます.手術をすれば母指を使った正しい物の持ち方ができるようになります.正しいパターンだと指の数が1つ少なくても目立たないので,これを動的整容と言います.

 

非典型的な裂手では母指と示指が合指をしていたり,手全体がもっと複雑な形になっていたりします.その場合の治療はその状態に応じた個々に異なる手術になり,より専門性が高まります.また,「短合指症」との区別が難しい場合もあります.

 

足で裂手に相当する状態が裂足です.裂足では複数の趾が欠損していることが多いです.大多数の例でそのままでも普通に歩行ができます.靴を履いて生活する欧米では手術をせずに一生を過ごす人も多いようです.日本では素足の生活がありますので,普通は裂けた部分を閉じる手術を行います.

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