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先天性絞扼輪症候群

先天性絞扼輪症候群の三大症状は絞扼輪,先天性切断,先端合指です.生まれた赤ちゃんの手や足に輪ゴムを強く巻き付けたようなくびれがあるとき,指や手が切断されたようになくなっているときに,この症候群が疑われます.「症候群」とはいくつかの症状が組み合わさった状態を指す言葉です.その原因が単一のものである必要はありませんが,先天性絞扼輪症候群の原因は,子宮内で羊膜という元来は大切な膜様の組織(身体を構成しているパーツのこと)が何らかの理由でぐるぐる巻かれて紐状になって,その紐が手足に巻き付いてそれより先の部分に血が通わなくなって壊死することにあります.そのため,羊膜索症候群とも言われています.いわば子宮内での外傷です.この症候群とよく誤診されるのが「短合指症」です.


絞扼輪は左上の写真にあるようにくびれがあることが特徴です.くびれが軽いときは少し凹んだ感じがするだけで,機能的には問題ありません.美容的な手術の希望があれば行います.くびれが強い場合はそれより先の循環障害を生じます.血液の循環障害があると色調が悪くなっていたり,リンパ液の循環障害があると丸く脹らんで腫れたようになっています.もっとくびれが強かったら,子宮内で血液が流れない状態になって先端の壊死を生じます.


完全に壊死すると生まれてきたときには跡形もなくなっています.それが先天性切断と呼ばれる状態です.切断されたときに先端同士がくっついて治ると先端合指となります.やけどの手で指がくっついて治ることがあるとお聞きになったことがあるでしょうか.それと同じです.左中央の写真のように指の基部にすきまが必ずあります.それに対していわゆる合指症は発生の過程で指が分離し損ねた状態で,この先端合指とは異なる病態です.典型的な合指症については「合指症」の項目を参照下さい.絞扼輪は手足だけでなく,前腕や上腕,下腿や大腿にも左中央の写真のように生じることがあります.


さて治療ですが,絞扼輪より先に強い浮腫や循環障害を来している場合は生後早期に手術を行って循環を改善させる必要があります.浅い絞扼は成長とともに目立たなくなることもあるので,浮腫の増強がないことを定期的に確認しながら経過を見ることも可能です.もし早く手術が必要がどうか不安がありましたら一度来院していただくか,メールで相談して下さい.(お問い合わせフォームをご利用下さい)先天性切断では指が先細りになっていて,先端の皮膚に余裕がない場合があります.その時は末梢の骨の先端を一部切除して丸く整えておくことが,将来の先端痛の予防に有効です.どの指がどの程度欠けているかによって手全体の機能がどれくらい障害を受けているかが決まります.程度に応じてさまざまな手術方法がありますが,個々の状態によってどれが適しているかが変わります.経験豊かな医師に相談して下さい.先端合指は合指症の治療に準じて行いますが,先端合指はその癒合のしかたが複雑で,どこをどう分離すればよいかわかりにくいので,これも経験のある医師がすべき手術です.

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