このページでは先天異常の治療に関わりの深い手の外科と小児整形外科について説明しています
手外科とは
わかりやすく一言で言えば整形外科の一分野で,手や上肢に関連する疾患・外傷を治療します.手が第二の脳と呼ばれることをご存じでしょうか.二本足歩行が可能となったわれわれの祖先は,解放された上肢を巧緻な機能を有する道具として使用し始めました.手の使用が脳を活性化させ脳の発達を促し,それが手の使い方にフィードバックされて好循環が生じて,他の動物と比較して知能が飛躍的に伸びたのです.人類が文明を築くことのできた理由のひとつが手,特に母指の発達だと言われています.精巧な脳機能を最も有効に活用しているのが手の機能です.その手の機能的 美容的再建を行うのが手外科医です.使いやすく治すための整形外科の知識と,きれいに治すための形成外科の知識を兼ね備えています.
手外科は専門医制度の中で整形外科専門医と形成外科専門医のサブスペシャリティーとして正式に認められています.単なる整形外科医,形成外科医よりも一段階 専門特化していると考えて間違いありません.手の先天異常は見かけの問題だけでなく,機能障害も有していますから,四肢先天異常だけでなく手の治療においては手外科医を訪ねられることをお勧めします.手外科医のリストは日本手外科学会のホームページにあります.手の先天異常はその中でも特殊は領域で手外科医の中でも経験数に大きな差がありますので,受診された場合はご自身の子どもさんと同じ病態の治療経験について尋ねてみるといいでしょう.
小児整形外科とは
小児整形外科は子どもたちの運動器疾患(脚注参照)の治療を担当する科です.かつては小児整形外科は整形外科の中心でした.整形外科は英語でオルソペディックスといいます.語源をたどるとオルソはギリシア語で「矯正する、まっすぐにする」という意味です.ペディックスもギリシャ語で「小児」の意味ですから,整形外科は子どもの曲がった体をまっすぐにするという意味になります.日本整形外科学会のロゴマークにも曲がった木の幹をロープで矯正している図が描かれています.日本小児整形外科学会のロゴマークはそこに天使を飛ばしたもので,私はとても気に入ってます.なお日本小児整形外科学会のホームページには日本小児整形外科学会会員の勤務する医療機関のリストが載っています.
医療のニーズはどうしても多数派に向かいます.したがって行政上,現在の日本のような高齢化社会ではお年寄りの医療が優先課題となることはしかたありません.重要なのはそのような時代であっても子どもは毎年年間100万人近く生まれ,その何%かの子どもたちは障害をかかえたり怪我をしたりして医療サービスを受けるという事実です.ご両親やご家族がわが子に最善の医療サービスを受けさせたいという気持ちを持つことは当然のことです.もし近くの病院に行って診たことがないと言われたら今の時代ならインターネットで検索すると思います.そしてこのインターネットが普及した時代においても,比較的まれな病気についての情報が乏しいことに気づいてストレスを感じることでしょう.
このサイトでは,小児整形外科の中でも私が特に専門としている分野である手の先天異常や足の先天異常を中心に,できるだけわかりやすく疾患を説明をし情報を提供しています.それに加えて,ここで説明していない領域の情報についてもリクエストをいただければ可能な限り追記していくつもりですので,ご遠慮なくお知らせ下さい.また,医療関係の方に対しても診断・治療に関してのアドバイスを行っています.これについては医療関係者のページを作成予定ですが,それまでは従来通り個人的にメールで相談してください.
脚注)運動器<出典Wikipedia>
運動器(うんどうき)とは,動物の器官の分類の一つで,運動器とは身体を構成し,支え,身体運動を可能にする器官である.ヒトを含む脊椎動物では身体の支柱である全身の骨格と関節(骨格系)と,それらに結合する骨格筋,腱および靭帯が運動器に所属する. これらをまとめて運動器系(うんどうきけい)として扱う.